#コインロッカーベイビーズ

ルードウィヒの時「やるじゃん」だったものがコインロッカーで「すごいな」に変わってて。本読みからなにからメンバー含めた大人に囲まれて心配されながらベートーヴェンになっていったけど今回は違った。ハシが生きていた。

 

 

 

コインロッカーベイビーズ。原作は読まなかった。橋本くん外部の舞台できっと気合を入れてくる その中で表現して見せてくれるハシが私の中でのハシになってほしかったから読まなかった。村上龍の文章を頭の中取り込み始めたのは2日目が終わってから。読まないとダメかもしれないと思った。彼は何かを探しているようだった。私も同じ気持ちになろうと思った。コインロッカーベイビーズ。大きなテーマだった。ハシは苦しかった。原作は大ヒットベストセラーで何年もの間温められてきたらしい大きな作品に自担が抜擢されて心躍る気分で高鳴りを覚えた約9ヶ月前を思い出すとそれは軽率なやつ。でも嬉しかった。その時は嬉しかった。コインロッカーベイビーズ。舞台が決まって嬉しかった。

 2日目かな  レポで「ハシよかった。」をみて"ここから""まだまだいける"って思った。「ハシ」は橋本良亮に何かを教えてくれる気がした。まあ初日は橋本良亮としての衝撃をストレートに受け入れてしまったからそれどころじゃなかったけど。もう思い出したくもない。お洒落せなかあん。でも「まだまだいける」からハシが途中すごい勢いで揺れはじめたときはこちらサイドもかなり体力使ったわ。カーテンコールだけは橋本良亮に戻ってくれた初日、2日目だったけどこの辺からはっしーどっか行っちゃったみたいで戻ってこなくなったね。なんだろう、舞台が終わった後のさみしさが半端じゃなく残っていた。

 

 

 

 

 

 

青い舌

 

 

 

「ハシ」を表現するのに大事な曲。東京に自分を探しに来たキクにDという男を紹介して本当の自分、ホモという姿を教えるときに歌う曲。

 

 

 

 

はじめのころは「橋本くんエロい」だった  橋本くんのパフォーマンスとして見ていたから。単純に橋本良亮として見ていたし、橋本良亮として歌って踊っていたから  ハシを作っていたから。どうにか表現しようと思ったんだろうね 明らかにセクシーという表現のやつ。それがいつの間にか体のくねらせ方も息づかいも知らない人になってて……それがたぶん始まって1週間くらい。ひとまず青い舌においての話。始まって1週間目はちょうど11日だから。その辺で大きな体の橋本良亮が小さなハシをぐっとつかまえて引き寄せ始めて抱きかかえたころ。「ハシ」を知りはじめたころ。舞台が始まって 音が消えた~って歌うけどたぶんハシじゃない、橋本くん。こちらサイドも橋本くんに会いに来た今日に喜びを覚えたばっかりだから。「僕はホモなんだよ」って聞いてやっと動く。キクにDを紹介する嬉しそうで恥ずかしそうなあの顔が腹立たしくも愛しい。音が鳴ると知らない人になる。たぶん青い舌から始まる。

 

 

 

消えそうに細く儚く透き通る声

 

やわらかい肌のよじれ 

 

切なくもどかしい瞳 

 

妖艶に揺れる髪の毛 

 

にじむ汗 

 

高鳴る鼓動 

 

見え隠れする羞恥 

 

あふれ出る愛しさ 

 

欲望に果てる性 

 

ぬくもりに包まれる快楽 

 

堕落していく情 

 

 

 

すべてに包まれてハシになる。この瞬間ハシにはまって橋本良亮がどっかいっちゃうんだ。その境界に落ちる感覚が心地よかったりする。広い広いコインロッカーの中を漂うハシが橋本良亮を抱きかかえる。きっと橋本くんもこの感覚がたまらなかったんだと思う。なにかに閉じ込められている今の自分を解き放てる場所がハシで  居心地よかったんだと思う。だから重たい人間はハシという着ぐるみをうまく着こなして爆発させているように見えるわけで、取りつかれたように好き勝手してるんだもん それは疲れる。 

青い舌でハシを取り込んだことをきっかけに彼はハシを探し始める。けど何か大事なものを落としてしまう、ように感じるのは私だけ?

 

 

 

11日。感情の表現が「やりすぎ」を超えられなかった土曜日。悔しさ。そして日曜日、あれだけの変化を感じた、振り幅のある芝居と向き合っている。それは誇らしい。

いつもいろんな演じ方を見せてくれる人だから抵抗はなかったけど今回わたしがわけわからなくなってしまったのは、その見せ方を単純に「楽しい」と思えない自分がいることに気づいたから。今回はえび座じゃないんだ。ハシを知らない。わたしの中の好きな"橋本良亮"が抜けないんだよね。ハシになろうとする姿に負担を覚えてしまう。だから私側に寄ってきたハシは好きーってなるけどひっくり返されると嫌気しか感じなくなる。模索している姿は見たくない。

11日の夜に見たハシは表現の演技が狂気に突き抜けていて、内にこもったものがそのまま内にこもってしまったように感じて、インナーへと向かう心情を外側へ打ち出していけるようにならないと舞台での演技には行き届いてないかなって思った。双眼鏡で見ないとわからないことたくさんやり始めると結果ピンぼけしちゃうんだなと。私たちはいつも双眼鏡片手にしっかり表情まで見たいって思ってるから気づくけど。

12日夜、泣いてた。泣く演技じゃなくて感情のままに涙を流しているんだって感じた時そこにあなたの表現するハシが居たよ。セリフだって変えてるんじゃなくて変わったんだよ、ハシが震えていたから、あなたの内面から外側へと。知らない人だったハシにここで出会った。

11日に見た姿は序盤から原形がわからなくなるくらい狂い方が激しいハシが幕が終わるまでそこにいて、正直あなたの気持ちが読めないのとそこから理解しょうとする間に迷いが生まれて受け入れなかった。怖かったという気持ちだけが残って悔しい。でも12日は途中狂いながらも最初に感じたちょっと弱くて可愛らしいハシの面影が感じられて狂ってしまう人生はなんだか切なくて淋しくて………その時に見た表情も聞いた声もあれが橋本良亮ができるハシなんだと思ったから、一言で言いたくないけど、よかった。あのくらいなんにも考えないで、いや考えてなかったとは思ってないけど、思考より行動が先になってしまったくらいでもいいんじゃない?あなたにとってはきっとハシになろうという思考が邪魔をしている。芝居らしいことしないほうがハシがいるんだもの。舞台なんだけどさ。

たった1日であれだけ変化をつけられることはすごい事だと思う。それは心からの驚きだったし、嬉しかった。芝居が好きなんだなって伝わったし、イキイキしてるのは確かだったから。自信に満ちてステージに立つ姿はホントに誇らしい。だから「もったいない」だけは感じたくない。11日の答えは「もったいない」だった。わたしはただのファンで観客でしかないからきっとくどいし重い。うざい。ただここをゴールにして欲しくないという想いを抱いてしまったからには答えが欲しかった。そうしたら12日はゴールがいきなり見えたような景色が映った。気持ちが揺れた。舞台っておもしろいな……

途中見に連れて行った妹に「橋本くんが、ハシじゃなくて橋本くんがほんとにあのまま死んじゃうんじゃないかと思って、怖かった」って青い顔して言われたときは笑っちゃったわよ。

 

 

 

 

今日は怖いよハシ。今日はなんだか優しいねハシ。今日はどうしたの落ち着いてるねハシ。今日は楽しいねハシ。毎日毎日生きているようにぶつけてくるものに必死でついていこうとする。それは少しわたしよりも歩幅が大きくなかなか平行線になってはくれない。盗まれた目玉を探す。蠅、食べてないけど食べる。時間が流れる。帰ってきたニヴァに静かに涙を流したハシ。「おかえり」って小さくつぶやいちゃってたハシ。キッチンに立つニヴァを後ろから優しく見て立ちすくむハシ。初日からほんとに変わったところ。そしてニヴァが大きく感じはじめたころ、包み込んでくれた。小さなハシを、そして私を、包んでくれていた。いつかに見た暗転直前のハシの頬に光ったひとすじの線はとてもきれいだった。暖かい顔だった。緊張して固くなっていたなにか重たいものが緩む瞬間。重すぎる人間が想うことは勝手で ここまで探られたくないものを探ろうとしていた1ヶ月の話だ。探れるものと探れないものがあるが圧倒的に探れないものが多い中での話をする。気持ちを寄せてみようとする  寄せた気になる。

 

 

ラストの「生きる」に答えがあった。震えた。嬉しかったが正しいかもしれない。最後だけはさ、千秋楽の「生きる」だけは、あの時だけはハシだけのものじゃなくて橋本くんの叫びだった完全に。頼まれてもいないことを不器用なわたしだからこう勝手に深みにつけ込んでしまう。それぞれでしかなかったものだからそれぞれで解決するしかないんだけど「生きる」が教えてくれたときは1ヶ月という短くも長い戦いに決着がついたようにそれはもう快楽の果て。途中でわたしはゴールをここにしないでって変な不安を抱いてしまったから怖くなってしまった。最後、わたしの理想通りに終わることばっかり考えてた。舞台は最後完璧にズレなくはまって完成するようなものじゃない、ガンプラじゃないんだから。ニヴァじゃないけど自分を見失い始めたときはかなり体力持っていかれてしんどかったし、アネモネじゃないけどわたしそんなあなたを殺してあげるって思った。だから彼に答えが見つかっているならそれでよかった。悩んで答えを出そうとしていた彼の姿は美しかったから、必死で食らいつこうとしていた姿はかっこよかったから。「裏切る」を知らないというのは嘘になるけど信じようと思った。全部どうでもいいと思った。大きな体の橋本くんは小さな小さなハシになって広い広い広い広いコインロッカーの中にとじこめられていたのかもしれないけどすべての思いを胸に涙でぐちゃぐちゃに駆けていった先には大きな海が見えた。ホンモノの橋本くんは小さくてハシの大きすぎる海のような真っ黒い世界につけ込まれて帰ってきたのは何もかもを振りほどいたような真っ白な大きな自分だったはず。いつも大きく見えるキクが小さくなった千秋楽のホワイト・ノイズ。ハシは大きかった。いつも小さかったハシは確実に大きかった。

 

 

 

 

生きる。